重すぎる…

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

躾・教育という名の暴力、子どもは親の所有物ではない、殺される前に殺す、マスコミの誘導、殺害カレンダー。
涙なくして読めない、考えさせられる。。。

内容紹介

IQ136の天才少年はなぜ、自宅に火をつけたのか――。
2006年6月20日、奈良県で発生した事件は日本中を震撼させた。全国でも屈指の
進学校・私立東大寺学園高校に通う16歳少年が自宅に火をつけ逃走、焼け跡からは
少年の継母と異母弟妹の3人が遺体となって発見された。事件後、少年は中等少年院
に送られたが、事件の真相は少年法の厚いベールに包まれていまだに明らかになっていない。
著者の草薙厚子氏は、独自に入手した3000枚の捜査資料をもとに、少年と家族の実態に迫る。
警察が作成した供述調書には、少年の振り絞るような肉声が残されていた。

僕はこれまでパパから受けた嫌なことを思い出しました。パパの厳しい監視の下で勉強させられ、
怒鳴られたり殴られたり蹴られたり、本をぶつけられたりお茶をかけられたりしたことを。
なんでパパからこんな暴力を受けなければならないんや。一生懸命勉強してるやないか。
何か方法を考えてパパを殺そう。パパを殺して僕も家出しよう。自分の人生をやり直そう――。
僕はそう思うようになりました。(「第一章 計画/殺害カレンダー」より)

少年は4歳の時から、医師である父親にマンツーマンの勉強指導を受けていた。
指導はやがて鉄拳制裁とセットになり、少年は十年以上にわたって虐待に近い暴力を受け続けた。
少年はついに、父親殺害を決意する。中間テストの英語の点数が平均点に20点足りない――。
直接の引き金となったのは、ただそれだけのことだった。そして実際に犠牲になったのは、
憎んでいた父親ではなく、罪のない継母と弟妹だった。
本書には、少年が父親を殺そうと決意してから家に火をつけるまで、みずからの心の動きを赤裸々に
記した直筆の「殺害カレンダー」が掲載されている。

父親は少年が医師となることを強く望んでいた。医師となるためには良い大学に行かなければならない。
そのためには勉強を強要するのもやむをえない――。
そうしたひとりよがりの愛情が、いつしか少年を追い詰めていた。
今回の事件は、「特殊な家庭の特異な出来事」と言えるのか。過熱する受験戦争の中、
わが子を「所有物」だと思っているすべての親は、この父親の予備軍かもしれない。
本書はいま改めて、「家族のあり方」を世に問う一冊でもある。

内容(「BOOK」データベースより)
英語1の点数が20点足りない。ただそれだけの理由だった。2週間後の保護者会までに、すべてを消し去らなければ―。3000枚の捜査資料に綴られた哀しき少年の肉声を公開!少年法のタブーを破る衝撃ノンフィクション。過熱する受験戦争へ警告の書。

著者について
草薙厚子(くさなぎ あつこ)
元法務省東京少年鑑別所法務教官。
地方局アナウンサーを経て、米通信社ブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門のアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務める。
その後、フリージャーナリストに転身し、少年事件を中心に週刊誌、月刊誌に多くの記事を発表している。講演活動やテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。
著書に『少年A矯正2500日全記録』(文藝春秋)、『子どもが壊れる家』(文春新書)、『追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」』(講談社)などがある。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
草薙 厚子
元法務省東京少年鑑別所法務教官。地方局アナウンサーを経て、米国の通信社ブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門のアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務める。その後、フリージャーナリストに。少年事件、教育問題を中心に週刊誌、月刊誌に多くの記事を発表している。講演活動やテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

Amazon.co.jp: 僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実: 草薙 厚子
遺愛女子高等学校、明治学院大学社会学部卒業。法務省東京少年鑑別所法務教官、新潟総合テレビアナウンサーを経て、通信社ブルームバーグに入社。テレビ部門でアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務めた。

その後、フリーランスのジャーナリストとして独立。少年犯罪問題を取り上げ、テレビやラジオのコメンテーターとしても活動。凶悪で不可解な少年犯罪を精神医学の背景からも指摘している。「犯罪は複数の要因によって起っている」が、その一つの要因として、「発達障害」との関係性に着目している。広汎性発達障害の専門家との交流によるレポートを雑誌、書籍、テレビなどで発表していた。2007年9月、刑法の秘密漏示容疑の共犯で自宅や所属事務所を強制捜査されて以降、雑誌の記事掲載が途絶えていた。2009年2月、「なぜ私は敢えて法廷で情報源を明かしたのか」(『創』2009年3月号)とする記事を執筆し、およそ一年半ぶりに公式サイトも更新された。
(中略)
2002年から2003年にかけて、森昭雄が提唱する「ゲーム脳」を少年犯罪などと結びつけた記事を多数執筆。この仮説を「科学的に正しいもの」であるとする、誤った認識を世間に広める[1][2]。なお、森が「ゲーム脳」を提唱する以前、「川島隆太が『テレビゲームが脳に悪影響を与える』と発言した」という、事実と異なる記事を書いている[3]。
(中略)
2007年6月5日、奈良家庭裁判所が、著書『僕はパパを殺すことに決めた』について「少年審判に対する信頼を著しく損ない、関係者に苦痛を与えかねない」として、草薙と講談社に抗議文を送る。同年7月12日、同書について、東京法務局が「少年の成育歴などを詳細に記述したのは、プライバシーなどの人権の著しい侵害」と判断し、草薙と講談社に長男や父親らへの謝罪と増刷中止も含めた被害回復措置を取るよう勧告[7]。

同年9月14日、奈良地方検察庁と奈良県警が、刑法の秘密漏示容疑(非公開の少年審判や供述調書の漏洩)で、草薙の自宅や所属事務所などを捜索[8]。同年10月14日、奈良地検が、草薙に供述調書などの精神鑑定資料を閲覧させた精神科医を秘密漏示容疑で逮捕[9]。

同年11月2日、奈良地検が、草薙への情報漏示罪で精神科医を起訴し、草薙は嫌疑不十分で不起訴処分となる。草薙は京都市内のホテルなどで捜査資料を開示されカメラで撮影した事実を認めた[10]。

2008年4月9日、『僕はパパを殺すことに決めた』の版元の講談社が調査報告書を公表し、「『供述調書を直接引用しない』という取材源の医師との約束に反した重大な出版倫理上の瑕疵(かし)がある」と指摘された[11]。同年4月21日、草薙が記者会見し、講談社の調査報告書を「ICレコーダーの記録を無断で引用した」と批判し、謝罪と削除を要求してることを明らかにした[12]。

同年8月28日、NHKが「奈良地検の事情聴取で"医師に調書を見せてもらった"と草薙が話した」と報じた件で、草薙は「取材源は秘匿した」として、NHKに対して1000万円の損害賠償請求訴訟を東京地裁で起こす[13]。同年12月10日、講談社は『僕はパパを殺すことに決めた』について、「コピー禁止」「直接引用禁止」「原稿の事前確認」の合意に反した「出版倫理上の瑕疵がある」と指摘した文書を全国の図書館に配布した。しかし草薙は、この3点の約束は無かったと主張し、講談社のHPに自身の見解を掲載させた[14]。

2009年1月14日、草薙は、調書漏洩事件の公判(奈良地裁)で、一転して調書の入手先が起訴された医師であることや、許可なく調書を写真撮影した事実を認めた[15]。引用は講談社からの提案だったという[16]。

草薙厚子 - Wikipedia
『僕はパパを殺すことに決めた』について

 弊社学芸図書出版部は本年5月21日、『僕はパパを殺すことに決めた』を刊行いたしました。本書に関連するとして奈良地方検察庁は「秘密漏示」を名目とする一連の捜査を続け、10月14日、事件を起こした少年の精神鑑定を担当した医師を逮捕するに至りました。
 私たちは今回の捜査の目的はメディアの取材活動を萎縮させることにあり、到底容認できるものではないと考えております。版元として取材源を明らかにすることはできませんが、本書に関連するとして身柄を拘束され、多大な苦痛を受けておられる鑑定医の方には心よりお詫び申し上げます。また、本書刊行の結果として、本来あってはならない出版・報道に対する権力の介入を引き起こしてしまった社会的責任を社として痛感しております。弊社では、本書出版の経緯、形態、意義について第三者を含む調査委員会を設けて詳細に検証を行い、その結果を改めて公表いたします。

 著者の草薙厚子氏が本書でテーマとしたのは、2006年6月20日、奈良県の進学校に通う当時16歳の少年が起こした自宅放火事件です。この事件では少年の継母と異母弟妹の3人が犠牲となっており、発生当初から社会的に大きな関心を呼び起こしました。
 まことに痛ましく、かつ重大な事件にもかかわらず、少年審判が公開されないこともあって、事件の真相はほとんど明らかにならないまま風化しようとしていました。草薙氏は取材の過程で少年や父親の供述調書をふくむ捜査資料を入手し、それらの資料を引用しつつ、少年が事件を引き起こした動機や心理状態を描いております。そして、事件の背景には常識をこえた勉強の強制、過熱する受験戦争が横たわっており、どの家庭でも起こりうる普遍性があることを明らかにしました。弊社出版部としても、この事件の真相を伝えることは社会的に大きな意義があると判断して、本書を刊行した次第です。

 本書については7月12日、東京法務局長より、非公開とされる少年審判の供述調書などを引用し、少年の心理、家族の私事などを詳細に記述することによって少年のプライバシーを侵害したとして、以下の勧告を受けております。
《本件書籍による更なる被害を防止するための適切な措置を講じるとともに、今後、このような人権侵害行為をすることのないよう、ここに勧告する》
 弊社はこの勧告を真摯に受けとめ、少年法の精神を尊重しながら今後も弊社の出版活動に反映させていく旨を公表しました。
 その後、9月14日、奈良地方検察庁により、本書に関連するとされる強制捜査が行われるという事態に至りました。著者の草薙氏の自宅ならびに所属事務所、少年の精神鑑定を担当した医師の自宅ならびに勤務先に家宅捜索が入り、以後、担当編集者をはじめ何人もの社員が奈良地検による任意の事情聴取を受けてきました。さらに9月28日には、この件に関連するとして京大教授の自宅ならびに研究室が家宅捜索を受け、任意の事情聴取が繰り返されました。
 一連の捜査は、「秘密漏示」に対するものとされています。「秘密漏示」とは、弁護士、医師や薬剤師といった高度な守秘義務を要する職業につく人が、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らした場合に適用される罪状です。
 一方、私たちジャーナリズムに携わる者の使命は、国民の知る権利に応えるべく、真実を明らかにして報道することにあります。社会的意義、公益性のある報道のために、官公庁の不正や企業の組織的犯罪など、本来なら国民に広く開示しなければならないような重大な情報を得るため、守秘義務保持者らを含む情報源を取材するケースもあります。今回の事件にあたっても、真相を明らかにすることを目的として、著者を中心に取材活動を展開しました。一連の取材のなかで供述調書を含む捜査資料を入手したわけですが、この取材活動は正当な行為であったと考えています。
 弊社および草薙氏は奈良地検の事情聴取に対して、調書の入手に関しては正当な取材行為であったことを主張し、情報源秘匿の原則を守りながら可能な限りの説明を任意で行ってきました。現在も捜査は続いており、弊社としては出版社として守るべき原則にしたがって対応してまいります。

 取材経過ならびに今回の捜査に関する弊社の考え方は以上のとおりです。
 本書によって傷つけられたと感じておられるご遺族の方々、鑑定医の方、京大教授はじめ今回の捜査によりご迷惑をおかけした方々につきましては、弊社としてもまことに申し訳なく思っております。ことに取材にご協力いただいた少年の祖父の方には、お気持ちに反する結果となってしまったことを、心よりお詫び申し上げます。
 なお、弊社としては事態の推移に鑑みて重版を控え、出荷を見合わせております。その他、本書については図書館での閲覧問題などさまざまな混乱が生じており、読者のみなさまにご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
 今回の本作りについてはさまざまなご指摘をいただいております。真相を明らかにするためとはいえ、捜査資料を引用することによって少年法に定められた審判の非公開原則を破ってよいものかどうか。人権に対する配慮が欠けていたのではないか。もっとも大切にすべき取材源を危険にさらすものではなかったか。これらのご批判については、弊社としても謙虚に耳を傾け、みずからの本作りを問い直す必要があると考えています。具体的には冒頭で申し上げたとおり、調査委員会が詳細に検証を行い、その結果を公表するとともに、今後の出版活動に活かしてまいります。なにとぞご理解いただきたくお願い申し上げます。

2007年10月17日
講談社

講談社から皆様へ: 講談社「おもしろくて、ためになる」出版を
 本年5月に弊社が刊行した『僕はパパを殺すことに決めた』(草薙厚子著)は刊行直後より、奈良家庭裁判所からの抗議、法務省人権擁護局の勧告を受けるなど、さまざまな論議を呼んできました。9月14日には鑑定医の方と著者に対して奈良地方検察庁による強制捜査が行われ、さらに10月14日に鑑定医の方が秘密漏示容疑で逮捕され、11月2日に起訴されるという事態に至りました。

講談社から皆様へ: 講談社「おもしろくて、ためになる」出版を
『僕はパパを殺すことに決めた』
「調査委員会報告書」ならびに「講談社の見解」発表にあたって

2008年4月9日
株式会社 講談社

 2007年10月14日、弊社刊行の『僕はパパを殺すことに決めた』出版に関わったとして、精神科医の崎濱盛三医師が秘密漏示罪で奈良地検に逮捕されるという、前代未聞の事態が起こりました。これは、断じて許すことのできない検察の暴挙であり、公権力の不当な行使によって、メディアおよび情報提供者を萎縮させることを狙ったいわゆる国策捜査以外のなにものでもありません。一方で、弊社は本来あってはならない報道・出版に対する公権力の介入を招いてしまった責任を痛感しております。また、不当な捜査によるものとはいえ、崎濱医師はじめ多くの方々に多大なご迷惑をおかけしてしまいました。あらためてお詫び申し上げます。

 4月14日、奈良地裁において崎濱医師の裁判が始まります。この裁判では、崎濱医師逮捕の不当性が明白になり、無罪判決が勝ち取れるものと、確信しております。そのために、弊社はできうるかぎりの協力をしてまいります。

 この本が昨年5月に刊行されて以降、さまざまなご批判・ご意見をいただいてまいりました。公権力の側からは、発売直後に長勢甚遠法相(当時)の遺憾談話が発せられ、7月には「今後このような人権侵害行為をすることのないように」との勧告が、東京法務局長からなされたりしております。

 そして、9月14日、奈良地検によって、崎濱医師の自宅と勤務先、著者草薙厚子さんの自宅および所属事務所が家宅捜索され、きわめて不当な捜査が始まりました。

 強制捜査がスタートした9月14日からの約1週間は、検察からの任意での事情聴取の求めに応じ、複数の弊社社員が検察庁に出頭を続けました。しかしながら、「長時間の、しかもきわめて威圧的な取調べ」が続いたため再三抗議いたしました。にもかかわらず全く事態が好転しなかったばかりか、悪質な虚偽情報のリークが繰り返されました。そのため、9月22日からは聴取を拒否しております。この前後には家宅捜索間近の情報も流れ、社として強制捜査を覚悟した時期もありました。

 ところが、検察は、著者草薙厚子さんを被疑者として執拗に取り調べるとともに、聴取に応じ逃亡・証拠湮滅のおそれのない崎濱医師を逮捕、さらに京大教授に対するまったくの「誤認捜査」(自宅・研究室を家宅捜索)まで行いました。捜査全体が、常軌を逸した形で終始展開されたわけです。11月2日に、崎濱医師が起訴されるという、あってはならない形で捜査は終結しました。検察の暴挙によって惹起されたこの事態は、私たちにとっては過去に例をみない痛恨事でありました。

 本作りの段階でおかしたミスによって、検察に踏み込むすきを与え、多くの方々に筆舌に尽くし難いご迷惑をおかけしてしまったことを、今後も私たちはけっして忘れてはならないと考えております。あまりに苦いこの教訓の中から、私たちの重大ミスはなぜ起こったのか、二度とこのようなミスを起こさないためにどのような対策が必要なのか、そしてなにより今後の出版活動はどうあるべきなのか、私たち自身が真剣に考え続けなければなりません。

 そのような反省のもと、昨年12月、奥平康弘委員長以下5人の有識者の方々にお願いし、 第三者機関である「調査委員会」をスタートしていただいたのです。率直かつ厳しいご意見・ご批判をいただき、今後の出版活動に生かしていく、それこそが最大の眼目です。

 このたび、「最終報告」を調査委員会からいただきました。この問題にかかわった多数の社内外の関係者へのヒアリングと、それに基づく討議を精力的に行っていただいた調査委員の方々に厚く御礼申し上げます。

 去る10月17日に発表した社の見解においても、「権力の介入を引き起こしてしまった社会的責任を痛感して」いると述べています。多くの有識者の方々が、「検察はメディアおよび情報提供者を『萎縮』させるために今回の不当捜査を行った」と指摘しています。

 であるからこそ、今回の事態を招いてしまった私たちが「萎縮」してはならない、この苦い教訓を生かして真摯な出版活動を行っていくことこそが、私たちの最大の責務であると考えます。

講談社から皆様へ: 講談社「おもしろくて、ためになる」出版を
崎濱盛三医師への判決にあたっての見解

2009年4月15日
株式会社 講談社

 本日、奈良地裁から崎濱盛三医師に対して、きわめて不当な判決が下されました。
 まず、この判決は崎濱医師および弁護団の正当な論証をあえて退け、検察側の主張を単に追認しただけの理不尽なものであり、強く抗議します。あわせて、弊社刊『僕はパパを殺すことに決めた』(草薙厚子氏著)に関連して、いわれのない罪に問われた崎濱医師に心よりお詫び申し上げます。今後とも崎濱医師にはできうる限りの支援を続けてまいります。
 弊社は、本来あってはならない報道に対する公権力の介入を引き起こしてしまった社会的責任を重く受けとめています。その反省のもと、今後も萎縮することなく真摯に出版活動を行い、社会に貢献してゆく所存です。

 2003年の個人情報保護法成立以来、さまざまな形でメディアの活動に対する規制が強化されてきました。また、間もなく導入されようとしている裁判員制度においても、多くの有識者が指摘しているとおり、捜査当局による事件の全容の開示がなされなくなることが強く危惧されています。
 昨今の報道をめぐる裁判の判決を見ても、司法権力がメディアを圧迫しようとする傾向はますます鮮明になってきております。国民の「知る権利」が侵されかねないほどの異常な事態の頻発に、私たちは重大な危機感を覚えずにはいられません。
 本件に関して、弊社は一貫して奈良地検の不当性を訴えてきました。
 そもそも崎濱医師は任意の取り調べ段階で事実関係を認めており、逃亡・証拠隠滅などのおそれが皆無であるにもかかわらず、逮捕、20日間にわたって勾留するなど、奈良地検の手法はまさに捜査権の濫用というべき異常なものでした。一連の介入は、メディアへの情報提供者を萎縮させる目的でなされた強圧的かつ恣意的なものであることを改めて確信しております。

 本書は2006年6月、奈良県で起こった高校生による自宅放火事件をテーマとする作品です。少年の家族3人が犠牲になるというまことに痛ましい事件でしたが、その真相はほとんど明らかにならないまま風化しようとしていました。弊社としては、知りうる限りの事実を伝えることは社会的に大きな意義があると考え、本書を刊行した次第です。
 一昨年11月に発足した第三者による調査委員会からも指摘を受けたとおり、今回の弊社の本づくりの過程にはさまざまな問題点がありました。情報源との関係構築に不備があったこと、社内のチェック・システムが万全なものでなかったこと、装丁やキャッチ・コピーに行き過ぎた部分があったことなど、報道に携わる者として率直に非を認めざるを得ません。
 弊社としては第三者調査委員会からの提言を真剣に受け止め、昨年4月に社内に出版倫理委員会を設置しただけでなく、全社員に向けて定期的にセミナーを開催するなど、社をあげて意識向上に努めております。
 日本書籍出版協会と日本雑誌協会が共同で発表した「出版倫理綱領」には、「文化と社会の健全な発展のためには、あくまで言論出版の自由が確保されなければならない」「われわれは、著作者ならびに出版人の自由と権利を守り、これらに加えられる制圧または干渉は、極力これを排除するとともに、言論出版の自由を濫用して、他を傷つけたり、私益のために公益を犠牲にするような行為は行わない」とあります。
 この綱領の精神に則り、私たちは今後とも、公益性に十分な配慮をしつつ、よりよい出版活動を展開してゆく所存です。
 本件は、私たちメディアに携わる者にさまざまな課題を投げかけています。少年事件報道のあり方、メディアと司法の関係、青少年の精神保健の現状など、いずれも現代社会において避けては通れないテーマです。これらのテーマについても私たちは継続的に取り組み、出版活動を通して社会的責任を果たしてまいります。
 何とぞご理解たまわりますようお願い申し上げます。

講談社から皆様へ: 講談社「おもしろくて、ためになる」出版を

Ref. Amazon.co.jp: 僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実: 草薙 厚子

tags: book

Posted by NI-Lab. (@nilab)