中京大学公開講座 ソフトサイエンスシリーズ 第28回 「世界に広がるRuby ~生みの親が語る~」 という まつもとゆきひろ氏 (Matz) による講演 を聴きにいった。

中京大学公開講座 ソフトサイエンスシリーズ 第28回 「世界に広がるRuby ~生みの親が語る~」

主催: 中京大学・人工知能高等研究所、名古屋市科学館
後援: 中日新聞社
日時: 2007年10月12日(金) 15:00~16:30

白川公園内の

白川公園

名古屋市科学館サイエンスホール(生命館地下2階)が講演会場。

名古屋市科学館

中京大学公開講座 ソフトサイエンスシリーズ 第28回 「世界に広がるRuby ~生みの親が語る~」

以下、ざっくりレポートなメモ。

# 聞き間違いとかあるかも。

# 司会の方が年配でマジメでカタい感じだったのが印象的。
# Matz氏が入ってきたとき「ご入場であります」とカタイ雰囲気で言っていた (^_^;

主催者の挨拶

今週号 (2007年10月17日号) のNEWSWEEKの特集記事「世界が尊敬する日本人100」にMatz氏が入っていた。

アキバの女の子がうんぬん。
-> 秋葉原マップ:Newsweek日本語版 「世界の尊敬する日本人100人」にメイドカフェがランクイン

Ruby on Rails (RoR) は、むしろ Rails on Ruby では。

Matz氏の講演

「体操のお兄さんみたいなマイク(by Matz氏)」をつけて登場。
128枚のスライドを90分で説明する。

Rubyとは

・プログラミング言語
・オープンソース
・RoR が人気

プログラミング言語とは

思考の表現をコンピュータに伝えるユーザインターフェース。

オープンソースとソフトウェアの自由

Magic Point (Microsoft Office PowerPoint みたいなツール) にバグがあったので Matz 氏がソースコードを修正して、今回のプレゼンも無事に Magic Point でできます、というエピソード。

Windows にバグがあっても、ソースコードが無いから自分ではなおせない。

生産性

Java (with Hibernate and Struts) VS Ruby (with RoR) でソースコードの行数が10倍ぐらい違う。Ruby のほうが少ない行数。

Ruby では 15分でブログシステムを作れる
Ruby では 2分で名刺管理システムを作れる。練習必要(笑)。

Matz は BASIC 世代

雑誌「IO」や「マイコンベーシックマガジン」読者。

Rubyの歴史

はじまり <- バブル崩壊で仕事がヒマだった。

「オブジェクト指向スクリプト言語 Ruby」を書くのに3年かかった。

「プログラミングRuby」 の原書 「Programming Ruby」 は速いスピードで書かれた。
あちらの人の底力を感じた。

趣味のRubyと稼ぐための仕事の両立が大変になる。
NaCl がスポンサーに。
NaCl は 塩化ナトリウム (笑い)

Ruby の特徴

・オブジェクト指向
・文法
・高階関数

言語別 文法の特徴
・Lisp: S式
・Smalltalk: メッセージ
・Python: インデント
・Ruby: 保守的 (ALGOLに回帰?)

Ruby の哲学

・簡潔さ
・書きやすさ
・単純さを追求しない -> 「自然」と「単純」は違う

哲学に基づいたバランス

実行可能な擬似コード:
DSL(Domain Specific Language: ドメイン特化言語)風に使える。Rake(Ruby Make)とか。

人の心は単純じゃない -> 単純も複雑も好き

より少ない脳力消費でプログラムが書ける

局所生産性を極大化
・刹那的な生産性
・ノリ
・気分

Ruby の適用分野

ネットワークプログラミングはテキスト処理が多い
・HTTP, HTML, XML, SMTP, POP3, IMAP,...
・Ruby はテキスト処理に強い言語

想定外のRuby適用分野
・人工知能
・Bio Infomatics
・気象情報処理

twitter は RoR でできている
・最大風速11000リクエスト/秒
・パフォーマンスを10倍にチューニングしたらしい
・プログラミング言語時代のパフォーマンスは重要じゃない
・アーキテクチャ設計がパフォーマンスに大きな影響を与える

Rubyを使っている企業の話

IBM:
Rubyに注目しているらしい(ウワサ)

ThoughtWorks:
Rubyの商用IDEを販売。JRubyの開発者を雇っている。

楽天:
現状はPHPとJavaで作られている。これから作る部分はRubyで書く。

「バブルにご注意」
Rubyは実態以上に評価されている

Rubyの魅力

Love-Hate Ratio
愛されるRuby

言語の魅力
思考を拡張する

Sapir-Whorf 仮説: 3までしか自然言語に無い環境で育った人は4以上の概念を考えられない。自然言語においては否定的。
プログラミング言語に関しては Sapir-Whorf 仮説 が通用するのではないか。言語仕様が思考を拡張する。
-> サピア=ウォーフの仮説 - Wikipedia

for SE

Ruby成功の原則: 社畜となることを拒否

信頼されるエンジニア: 能力がある(フリができる(笑))

基礎技術力 <- 技術の基礎は変化しない
コミュニケーション力
英語力 <- 世界から情報を収集

Rubyの発展は逆輸入によるところが大きい

14年間の継続。あきらめたら終わり。

(16:30ちょうどにプレゼンが終了。その後、質問タイムが設けられた)

質問タイム

Matz氏が聴衆からの質問に答えてくれた。

Q: Rubyの命名理由は?
4文字で短いから
かっこいいから
誕生石云々は後付け

Q: JRubyについてどう思うか?
Java系システム構築者に受けそう
Java の API を使えるところが良い
本家Rubyを超えそうで怖い(笑)

Q: JavaとRubyの学習コストはどうか?
学びはじめはRubyのほうがラク
言語の80%を学ぶのはJavaのほうがラクではないだろうか。Rubyはけっこう奥が深いので。
Webアプリ(RoR)を学ぶならRubyのほうがラク

Q: 教育用言語としてのRubyはどうか? 「最近、学生の教育用言語を C から Ruby に変更したので Love-Hate Ratio が下がったらごめんなさい(笑)」 という質問者
Ruby は熟練したプログラマ(Matz氏自身)が生産性を上げれるようにした言語なので学習には向かないかも。でも学習用にも使えると思う。
学校の1年間で学べる量はJavaでもRubyでもそれほど変わらない。JavaのほうがRubyよりもおまじないが多いので、Rubyのほうがマシという程度。とある教育者が言った。

Q: Matz氏にとってRubyとは何か? 一言でいうと?
Rubyは作品というより子ども。手のかかる子ども。

周辺の風景とか

せっかくなので、いろいろ撮ってみた。

名古屋市科学館:
名古屋市科学館

ボールをつかむ爪の上の野兎:
ボールをつかむ爪の上の野兎

昔はブルービニールシートハウスがいっぱいだった白川公園:
白川公園

今はぜんぜん無かった。愛知万博のときに撤去したのかな?

場所は前の職場のすぐ近くである白川公園。

っていうか、名古屋の地下鉄にはこの講座のポスターが貼ってあるのだとか。すっげー。

Matzにっき(2007-09-17) - 中京大学公開講座「世界に広がるRuby」

名古屋の地下鉄の中吊り広告にあったあった。ので、自分は気づいて応募した。名古屋は東京と比べてこういうイベントが少ないからなぁ。
前の職場というのは徒歩5分ぐらいのところだと講演でMatz氏が言っていた。

ニューズウィークの件を見つけた。

Matz
松本行弘
プログラマー。彼が開発したオープンソースのプログラミング言語「Ruby」は、ウェブサイトを作るための言語として世界中で利用されている。アメリカでは松本を招いて国際会議が開かれるほど有名。日本では「まつもとゆきひろ」、海外では「Matz」で知られる。

2007-10-10 - もしもし、matsuuですが... - Matzは世界が尊敬する日本人100人のうちの1人

「ウェブサイトを作るための言語として」
表現が微妙。でも、ここにRoRうんぬんを入れるとプログラマ以外には理解不能な文章になりそう。

参加者レポートをいくつか見つけたので以下に列挙。

2007-10-12 - :Pe日記 - 世界に広がるRuby
中京大学公開講座 「世界に広がるRuby」 ~生みの親が語る~ に行ってきた。 - DenkiYagi
中京大学公開講座 世界に広がるRuby ~生みの親が語る~ - 2007-10-12 - kibojinの日記
中京大学公開講座に参加 - SmallStyle (2007-10-12)
Ryusuke KIKUCHI's memo(a.k.a. diary)(2007-10-12)
lightで行こう: 「世界に広がるRuby」を聴きに行った。
shj's diary(2007-10-12) - 中京大学公開講座「世界に広がるRuby」

追記: 2007-11-10

Matz 氏の日記で「世界に広がるRuby」についての言及を発見。
MagicPoint によるスライド資料も公開されていた。

で、「世界に広がるRuby」について、いろいろと話す。中京大学の公開講座は別に技術に限ったことではないそうで、宝石の話だと思って事務局に問い合わせてきたご婦人もいらっしゃったらしい。さすがに会場には宝石のRubyのことだと思って参加した人はいなかったと信じたいけど。

Matzにっき(2007-10-12) - 中京大学公開講座 「世界に広がるRuby」 ~生みの親が語る~

スライド資料 ⇒ MagicPoint presentation foils

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Posted by NI-Lab. (@nilab)