ファストファッション戦争

ファストファッション戦争

-Amazon.co.jp: ファストファッション戦争: 川嶋 幸太郎: 本
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-良書。どこかで聞いたことのある内容&業界人しか知らなさそうな話がうまくまとまっていておもしろかった。

-「H&Mはニューヨークやパリコレで発表されたシーズンの新作を、本家のメーカーよりも早く商品化することで定評がある」
-「H&Mはだいたい1週間で店頭の商品はすべて入れ替わる」

-「委託販売はアパレルメーカー側に圧倒的なリスクがかかってくる。コストをかけて売れ残ったら引き取り処分しなければならない」
-「そのためメーカー側はそのリスク分を価格に上乗せしたのである。個別ケースだが、一般的に商品1着売れれば2着分の利益が出る水準に設定されるという」

-「ユニクロの粗利益はコンスタントに50パーセントという高い利益率をキープ」
-「技術的にはユニクロは「匠プロジェクト」を推進していった。これは日本の職人を現地に派遣して技術指導するもの」
-「イギリスは階級社会で、小売の従業員も厳然とした仕事の分担が決められている。店内にごみが落ちていても、幹部は絶対に拾おうとしない。拾ってはいけないのだ。掃除の担当の社員の仕事を奪うことになるから」
-「中国では貧富の差が激しく、ユニクロ品をいくら値下げしても手が届かない貧困層と、ものすごいお金持ち(相対的にという意味だが)の富裕層に分かれていて、その中間のマーケットがなかった」

-ユニクロとH&Mは「生産そのものは委託だが、商品の企画開発、デザインは自前」

-「しまむらの商品1点あたりの平均価格は764円」
-「ユニクロが自前の開発体制を取ってから現在のレベルまで来るのに10年かかっている」
-しまむら「店舗に関しては、標準化が徹底される。売り場面積は約1000平方メートルで、地方の幹線道路のロードサイドが条件。出展コストは約1億円程度」
-しまむら「設計、外装、内装、什器なども共通化しているから低コスト出店が可能になるし、普通に出店すれば2億〜3億円はかかるという」
-しまむら「店舗の従業員はパート社員がほとんどなのだが、彼女たちのモチベーションは高い。長く勤めやすいからで、女性のパート社員のライフサイクルを考えれば、長く勤められるというのは戦力化の大きな武器となる」
-「実際、しまむらの店長はパート出身の女性店長が多い。会社側がここまでフォローして初めてパート戦力になるわけだ。都合のいい労働力として使い捨てしているほかの企業では考えられまい」

-「フォーエバー21では盗作に関する訴訟が米国では多発している。トロヴィータや、グエンステファニー、アナスイなど、多くのアパレルブランドのデザインを真似して、ほとんど同一の商品を、本家よりはるかに低価格で投入することも多いという」
-アバクロ「店舗運営のノウハウに長けている。特にVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)で、商品を魅力的に見せる店舗のレイアウトや陳列の方法などに特徴」
-アバクロ「大音響の音楽だったり、上品な香りを漂わせたり、本物のモデルが接客したり、というように来店客の感性を刺激する店作り」
-「トップショップの特徴はイギリスのブランドらしい過激さ」

-「カジュアルチェーンは地方から、セレクトショップは都会から」
-「セレクトショップは(中略)センスや感性というものが根底になければ消費者から受け入れられないし、受け入れる消費者の絶対数が都市部でなければ確保できない」

-「ワンゾーンはかつて靴のマルトミというカジュアルシューズのチェーン店だったが、ユニクロに買収され、グループ化された」
-「百貨店の平場では(中略)基本的に完全買い取りで、リスクを取るのは百貨店側だ。メーカーは安心して協力できると思われたが、もし売れ残りが出た場合、百貨店側が値下げしてバーゲンに出したり、アウトレットに流したりされる危険がある」
-「そうなるとメーカーのブランド価値は激減するというわけで、結局、売れ残りは引き取ることになる。従来とまったく変わらない」
-「このリスクを懸念したアパレルメーカーは自分たちの主力ブランドはなかなか平場に出さず、かといって協力しないわけにはいかないから、質の落ちる第二ブランド、あるいはそのために新たなプライベートブランド(PB)を作って、主力を温存してしまった」
-「完全に買い取るという契約を書面で交わしていても、"未引き取り"などの裏技で引き取りを拒否したり、次回はちゃんとやるなどの口約束をしたり、現場レベルで、リスクを回避するために様々な交渉が行われていたのだ」
-「契約段階でメーカーや卸の商品を買い取って絶対に返品しない、その代わり安く仕入れるというのはどこの小売り業者でもやっている。しかし」
-「小売りとメーカーの"力関係"によって、約束を反故にしたり、仕入れを怠ったり、次の約束をちらつかせたりと、様々な方法で小売りは完全買い取りをさぼってきた」
-「しまむらは買い取ったものは絶対に返品しない。すべてを売り切るのだ。廃棄率(どうしても売れなくて処理するもの)は1%にもならない」
-「発注側はいかに安く発注するか(中略)バイイングパワーで交渉する。メーカーは品質に関係なく、自分たちの利益を確保すべく、素材や縫製などの工程で手を抜く」

-無印良品「マニュアル経営を導入したものであるが、個人の裁量の範囲が大きく狭まったことで、社内の反発は強かったが、企業としてはムラがなくなり、在庫も大きく減少し、効率が高まるという効果があった」