正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について

読書メモ


-「要求、要件、仕様で意味するところは異なる。この区別が人によって違うため、「要件定義」と口にしたときに、それは希望を明確にすることなのか、プロダクトで実現すべき条件を定めることなのか、仕様を決めることなのか、異なる可能性がある」
-「システムが実際に形になり始めたところでようやく様々なことがわかることになる。不足していた要件や、その不足を満たすために追加変更するべき仕様の存在が明らかになったり、といったことだ」
-「確実性を上げるために要件定義をやったところで、合意形成をしたところで、要件の変更は必ず起きる。ならば、その行為に果たして意味があるのかと立ち返るのは自然なことだろう」

書籍情報


-正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について | 市谷 聡啓 | 工学 | Kindleストア | Amazon
--https://www.amazon.co.jp/dp/B07SGCH8R6?tag=nilabwiki-22&linkCode=osi&th=1&psc=1
-->従来のソフトウェア開発とは、「既に正解があり、記述された正解をそのまま形にする」というものづくりであり、いかに効率よく作るかという観点が主眼でした。そのため、正解の見えないなかで手探りで進んでいくことが必要となる不確実性の高い現代においては、うまく噛み合わない状況になっている開発現場も少なくありません。
-->本書では、共創を実現する具体的な⼿段としてのアジャイル開発を下敷きに、これからのソフトウェア開発/デジタルプロダクトづくりに、作り⼿(エンジニア、開発者、デザイナーなど)と、それを必要とする⼈(クライアント)がどのように臨むべきなのか、その考え方と行い方を具体的に提⽰する一冊です。
-->「正しいものを正しく作る(著者の掲げる理念)」とは、すなわち「正しくないものを作らない」戦略をとることであり、そのためには粘り強く「正しく作れているか?」と問いに置き換えながら探索的に作っていく必要があります。問いを立て、仮説を立て、チームととともに越境しながら前進していく。本書はそのための力強い手引きとなるでしょう。
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-->出版社からのコメント
-->プロダクトづくりにともなう不確実性を、いかに乗り越えるか?
-->アジャイルな探索的プロセスを精緻に言語化。
-->問いを立て、仮説を立て、チームととともに越境しながら前進していくための実践の手引き。
-->エンジニア、デザイナー、プロダクトオーナーなど、共創によるものづくりに挑むすべての人へ贈る、勇気と希望の書。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
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-->本書の構成と流れについて
-->本書の構成を目次や以下の各章概要説明で目にしていただいたらわかるとおり、仮説検証型アジャイル開発という考え方を体系的に整理して伝えるのであれば、4章→5章→2章→3章という流れで構成した方が適しています。
-->しかし、そうした構成となっていないのは、著者自身が理解し、実践し、その都度壁にぶちあたり、乗り越えた流れを再現するかたちをとっているからです。どのような立派な話であっても、手痛い失敗がその下支えになっていることがあり、そのため、結論の内容をきれいな順序で文章に示したとしても、「そんなものか」という受け止め方になってしまうでしょう。
-->なぜそこにたどり着いたのかを、著者の軌跡(ジャーニー)を追体験するように読み進めてもらうことで体感してもらいたいと考えています。
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-->第1章 なぜプロダクトづくりがうまくいかないのか ー わかっていないものをわかっていないままにつくる
-->本章では、一向にうまくいかないプロダクトづくりの「うまくいかなさ」を照らし出します。なぜ、うまくいかないのか。問題は何なのか。そこには不確実性が大きく関わっています。プロダクトづくりの不確実性は何によってもたらされるのでしょうか。これまでのプロダクトづくりを振り返りながら整理していきます。
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-->第2章 プロダクトをアジャイルにつくる ー 早く少しだけ形にする
-->アジャイル開発への期待と失望、それに伴う混乱を、どのようにすれば乗り越えられるのでしょうか。そこに向き合うために、まず本章でアジャイルの成り立ちを振り返ります。そのうえで、日本の現場に最もなじみのあるスクラムをベースに、アジャイル開発についての理解を整えます。なぜ、何のために、アジャイルに作るのか、その意義を自ら言語化できるようにしておきましょう。
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-->第3章 不確実性への適応 ー 正しくつくる
-->前章では、アジャイル開発とスクラムのあり方について見てきました。不確実性に対処するためには、それだけではまだ足りない観点があります。この第3章では、「アジャイル開発で乗り越えられない不確実性とは何か」を掘り下げます。そして、不確実性への適応のために、「余白の戦略」「スプリント強度を高める戦術」「全体への共通理解を統べる作戦」の3つを用いてその道筋を示します。
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-->第4章 アジャイル開発は2度失敗する ー 間違ったものを正しくつくる
-->ここまで、不確実性に適応するための手立てを示してきました。しかし実際に進めていこうとすると、チームは2つの壁に直面することになります。最初の壁は、「アジャイルに作る」という取り組みに伴う困難。もう1つは、開発チームとプロダクトオーナーの間に横たわる見えない壁です。見えない壁とはいったい何なのか、そしてそれを作り出してしまうのはなぜなのかを明らかにしていきます。
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-->第5章 仮説検証型アジャイル開発 ー わからないものをわかるようにする
-->プロダクトオーナーと開発チームが互いの間にある壁を越えてプロダクトを作っていくためには、「プロダクトとして何が正しいのか」というチームとしての基準が必要です。基準を作り、適宜アップデートしていくために、仮説検証という活動を行うことになります。本章では、仮説検証についてその中身を明らかにしていきます。
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-->第6章 ともにつくる ー 正しいものを正しくつくる
-->前章で、プロダクトについての基準をチームで作り、育てていく仮説検証のあり方について詳しく解説してきました。そしてこの最終章では、仮説検証での学びをアジャイル開発へとつなぎ、プロダクトづくりのジャーニーを完成させます。このジャーニーの根底には、「正しいものを正しく作れているか?」という常に向き合うべき「問い」が存在します。チームでこの問いに答えるために、ここまで述べてきたプロダクトづくりのあり方を越境していきます。