『この世でいちばん大事な「カネ」の話』 西原 理恵子

『この世でいちばん大事な「カネ」の話』 西原 理恵子

-Amazon.co.jp: この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ): 西原 理恵子: 本
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-良書。日本の貧乏系の文化圏のひとつ。生きるために働くことと工夫すること。貧乏はシャレにならない悲劇。

-第一章はサイバラのノンフィクション系マンガによく書かれてたような子ども時代のまとめな感じ。貧乏=絶望みたいな実体験話たくさん。貧乏は希望のない地獄。

-「故郷での貧しさゆえの八方ふさがりの生活。東京に出てきて学校に通いながら自分の絵を出版社に持ち込み次第に認められて行く。そしてギャンブル、アジアへの旅で出会った貧しい子ども達、大切な家族の事」

-「どん底で息をし、どん底で眠っていた。「カネ」がないって、つまりはそういうことだった」
-「どうしてお母さんたちが、みんなそんなにも殺気立ってるかっていうと、やっぱりお金がないからなんだよ。パーマだって、ちょっとでも長持ちさせようと思って、きつ〜く当てる。それでパンチパーマみたいなへんな髪型になる」
-「あそこの家のお姉ちゃんはこのあいだ万引きでつかまったとか、昼間からシンナーを吸ってフラフラしていた向かいのお兄ちゃんは、案の定シンナーの吸いすぎでこのあいだ死んだとか、そんな話は身のまわりに、売るほど転がっていた」
-「人並みの暮らしとか、子どもにちゃんと教育を受けさせる権利とか、お金が十分にないと諦めなければいけないことが次から次に、山ほど、出てくる」
-「それで大人たちの心の中には、やり場のない怒りみたいなものがどんどん、どんどん溜まっていって、自分でもどうしようもなくなったその怒りの矛先は、どうしても弱いほうに、弱いほうにと向かってしまう」
-「地元に残った女の子は、だいたい18ぐらいで結婚する。旦那はヤンキーあがりでたいていは日給の仕事して、1DKくらいのアパートで子どもが増えて、旦那の収入では生活はいつもギリギリ」
-「「こんなはずじゃなかった」って怒ってばっかりいるお母さんたちは、地元に残った女の子たちがやがてそうなる「将来の自分の姿」だった」
-「女の子は、あっという間にボロボロになっていくし、お母さんたちは、みんな、怒ってばっかりで、このままこの町にいたところで、先が見えてる。わたしはこの町を出るんだろうか。出られるんだろうか」
-「貧乏っていうのは、そうやって土砂崩れみたいに、何もかもをのみこんで押し流してしまう」

-「自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった」

-「何よりショックだったのは、先生たちが証言台に立って、ありもしないウソを次々と証言しはじめたことだった。こちら側の弁護士に追求されて、証言した内容がウソだったことを泣きながら認めた先生もいた」

-「「どうしたら夢がかなうか?」って考えると、ぜんぶを諦めてしまいそうになるけど、そうじゃなくて「どうしたらそれで稼げるか?」って考えてみてごらん」

-「自分の才能に自身がある子たちって、プライドだって高いからね。エロ本の出版社になんか、絶対に売り込みに行くわけがないもん……。だけどね、最下位のわたしのチャンスは、そういう絵のうまい人たちが絶対に行かないようなところにこそ、あったんだよ」
-「「商品の差別化」なんていうと難しい話みたいだけど、ようは、「もっとたくさん稼ぎたいなら、人とちがうことをやらなくちゃお金にならない」っていうこと」
-「わたしは、来た仕事を言われた通りにやるだけじゃなくって、自分なりの工夫をすることにした。サービス精神を発揮することで「ほかの人とは、ちょっとひと味ちがうんですよ」ってところを見せて、自分の個性をアピールしてみたというわけ」
-「わたしだって、最初は自分に何ができるかなんて、ぜんぜんわかっちゃいなかった。だいたい東京に出てきたときに、まさか自分がエロ本で「オンナのアソコはこう攻めろ!」なんていうテーマで図解を描くようになるなんて、夢にも思わないもんね」
-「「才能」っていうのは、そんなふうに、自分だけじゃわからない、見えてないものだと思う。自分で「こうだ」と思い込んでることって、案外、的外れだったりするからね」
-「何でも仕事をはじめたら、「どうしてもこれじゃなきゃ」って粘るだけじゃなくて、人がみつけてくれた自分の「良さ」を信じて、その波に乗ってみたらいい」

-「自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる」

-(『ぼくんち』について)「貧しい境遇の中でも、へこたれないで生きていく子どもの姿を描いた。子どものころ、貧しさの中でつらい思いをする友だちの姿をいっぱい見てきたわたしが「ほんとうはこうあってほしかった」と思う願い事として」

-「アルバイトと世界放浪は、男の子の必修科目だからね!」

-「旦那の稼ぎをアテにするだけの将来は、考え直したほうがいいよ」
-「だってリストラや倒産、失業みたいなことがこれだけ一般化している今の時代に「人のカネをあてにして生きる」ことほど、リスキーなことはないんだから」
-「目の前の現実から逃れるために、女の人が結婚を「避難場所」にすることは、よくあることだと思う。でも、もはや「結婚」が「避難場所」として成立しなくなっているのも、もうひとつの現実だよね」

-「子どもを「商品」として売るために、計画妊娠をしてまで赤ん坊を産む親がいる(中略)売れ残ってしまった「商品」は、川に流されるか、捨てられるかするんだと、その国の人に聞いた」
-「そのごみの山には、そのアスベストがどっさり、ふくまれていた。そこでごみをより分けて生活している子どもたちには、そういうアスベストを防ぐためのマスクもない」

-「「どうせ希望なんてないんだから、考えたってしょうがない」という諦めが、人生の教えとして、子どもの代へと受け継がれていく」

-「ニュースなんて、オンナどうしのグチやケンカと一緒よ」

-「働くことが、生きることなんだよ」