発達障害の子どもたち

発達障害の子どもたち

書籍情報


-Amazon.co.jp: 発達障害の子どもたち (講談社現代新書): 杉山 登志郎: 本
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--->言葉が幼い、落ち着きがない、情緒が不安定。
--->育ちの遅れが見られる子に、どのように治療や養護を進めるか。
--->長年にわたって子どもと向き合ってきた第一人者がやさしく教える。
---> 
--->第1章──発達障害は治るのか
--->第2章──「生まれつき」か「環境」か
--->第3章──精神遅滞と境界知能
--->第4章──自閉症という文化
--->第5章──アスペルガー問題
--->第6章──ADHDと学習障害
--->第7章──子ども虐待という発達障害
--->第8章──発達障害の早期療育
--->第9章──どのクラスで学ぶか―特別支援教育を考える
--->第10章─薬は必要か

読書メモ


-通常学級でやってみてダメなら特殊学級に移すというアイデアはお勧めできない
--ダメだったときは自己尊厳を傷つけて、子どもはぼろぼろになっている
--「人生の早期に子どもに挫折体験を与えて良いことは一つもない」
--特殊学級に在籍して、参加可能な科目には通常学級に出かける(交流)ことに関しては支障が少ない
--通常学級に在籍して特殊学級に出かける(通級)は特殊学級の担任にとって員数外の負担が増えるという理由から困難が多い
--特殊学級から通常学級へ変わることは可能

-学校の選択に当たってもっとも大事な原則は、従業に参加できるかどうかということ
--学校とは学級単位で集団教育が実践される場所

-遺伝と状況依存的なスイッチ
--MAO-Aと呼ばれる酵素を生じる遺伝子を持つ児童は攻撃的な性格を発現する傾向があることが知られている
---すべての児童においてそうなるのではない
---非常にストレスが高い環境(虐待環境下)においてのみスイッチが入り発現する
--慢性疾患に似ている。
---糖尿病の素因を持つものは多いが、節制によって発現は防げる

-「学校の先生からしばしば聞くのは、クラスの中でサポートが必要な子どもに受診を勧めると「うちの子を障害児にするのか」と激怒する親が少なくないという苦情である」
-「本人の責任ではないことによって(本人が怠けたり、わざと反抗したりしているのではなく、また親の躾の不備によるものでもなくて)学校生活に支障が起きている」

-境界知能
--IQ70~IQ84前後の知的能力を示す児童
--知的障害を持たない発達障害(経度発達障害)
--小学校教師の力量がもっとも反映される
---「小学校中学年のいわゆる9歳の壁の前後に、良い教師に当たった境界知能児はこの壁を突破し、知能自体も小学校高学年には正常知能になることが多かった。それに対し、そのような教師に恵まれなかった児童は、ここでハードルに捕まり、知能自体も小学校高学年には知的障害のレベルに下がっていたのである」

-現象としての知能
-状態としての知能
-素質としての知能

-自閉症のタイムスリップ現象
--「自閉症に対するあまりに強引な治療は、そのときには成果を上げたように見えていても、何年も経た後に強烈なタイムスリップ現象の頻発という形で副作用が吹き出すことがまれではない」

-自閉症の認知の穴
--クラスにいる人の名前がほとんどわからない
---夏休みにクラスの友達の名前と顔を覚える宿題、写真を見て名前を当てる課題をこなすことで対処
--遠足の 作文を書きましょう、という課題を与えられてパニックに。遠足といってもどこが遠足なのか。学校に集まって、バスに乗って、バスの中でゲームがあり、目的地について……どこを書けばいいのかと感じている。
--テンプル・グランディン

-自閉症グループの幼児は、知覚過敏性などの問題に妨げられて愛着の形成が著しく遅れる。
--小学校年代においてはきちんと子どもの甘えを両親に受け入れてもらうことがとても大事な課題となる
--一般に4歳前後までの幼児期が最も大変で、5歳ごろにコミュニケーションがめざましく伸びる時期がある
--小学校高学年は一生のうちでも一番良く伸びる時期となる
--5歳代と10~12歳代という2つの時期はコミュニケーション能力が飛躍的に向上する時期となることが多く、対人関係においても成長が認められる

-予測に基づく行動修正や予定の変更などの困難を克服する方法
--スケジュールカードなどによって見通しの立てにくさをカバーし、行うことを直線上に並べる

-日本の学校教育は行事が多すぎる
--準備なしに行事に駆り立てることは児童を混乱させるだけ

-「教師のいちばん近くの最前列中央に席を移動するだけで、学習が可能になる児童は数多く存在する」
-「少人数クラスに移行するだけで学習が奇跡のようにできるようになる子も存在する」
-「睡眠不足のときは注意の転導性は著しく亢進してしまう」
--早寝早起きによる改善

-「幼児の脳は、一つの神経細胞が挫滅しても、すぐにバイパスが形成可能という、ダメージに対する高い代償性を持っている」
-「たとえば、三歳前であれば言語中枢が大きなダメージを受けても、約半数の幼児は言語の復活が可能であり、さらに言語性知能が低下しないこともある。しかし同時に、幼児の脳は一つの細胞の興奮が周囲に漏れやすい構造となっている。幼児においては発熱に伴うけいれんが生じやすいのは周知のことであろう」
-「このような高い代償性は五歳を過ぎると失われるが、それでも前思春期までは成人より高い能力が保たれる。しかし10歳を過ぎると成人との差がなくなってくる。この10歳という年齢は、一つの臨界点であり、これまでに身に付いた言語や、非言語的なジェスチャーが一生の間の基本になることが知られている。重度の発達障害を抱えた児童の臨床で言えば、小学校中学年前に、基本的な身辺自立の課題を終えておかないと、それ以後に習得するのは非常に困難となる」

-今日の子どもを取り巻く状況は日内リズムといった基本的なことが実はもっとも困難な課題
-日内リズムの確立は食事時間が一定していることと同じ課題
--朝食をとることが日内リズムの確立には重要
--間食は子どもにとって重要な栄養源
---食事に準じる形で、時間を決め、着席をさせて、皿に取り分けて与えることも基本
--「日内リズムの確立に大きな妨げとなる問題は、父親が会社に長時間取られていて、遅く帰宅する家庭が非常に多いことである。核家族においては、たとえ専業主婦の家庭であっても、父親の子育てへの参加が不可欠であり、毎日10時過ぎに帰宅する父親を待つ家庭では、このようなことが不可能になってしまう」

-自閉症児の食べ物の好みの傾向は、健常児との間に大きな差はない
--偏食が極端になるのは、こだわりと結びつきやすい自閉症や広汎性発達障害

-運動については、両親と体を使った遊びを行う
--園で学んだリズム遊びなど

-情報の制限
--都会において刺激のない静かな環境を得ることが困難
--周囲の雑音の中から対人的な情報を絞り込むことが不得手な自閉症グループの幼児
--テレビをつけたままになっている状態は避ける

-初期抵抗
--新しい課題に対して成果が上がらないだけではなく、その周囲のものを巻き込んで拒否する
---トイレット・トレーニングや、スプーンを使った食事など
--14回ほどの試行で抵抗が減ってくる。最低でも2週間程度は粘ってみないと。

-具体的な目標を示す
--遊び: 双方向のやりとり。追いかけっこや、車を用いてボールの投げ受けのようなこと。
--身辺自立: 早寝早起き、朝食、時間を決めた間食、スプーンの練習
--コミュニケーション: 子どもからの要求が出たときが言葉かけの良いタイミング
---ミルクの要求のときにコップを持ってこさせるなど、同時に用事を足す課題を

-幼児期から基本的な療育に乗って日常生活訓練を積み上げてきた児童は、小学校入学前後に至ると、療育を積み上げる機会に恵まれなかった児童と比べたとき、同じ診断かと思われるくらい大きな差となってくる

-幼児期は障害独自の問題に関してそれほど神経質になる必要はない
--学童期になると独自の認知特性に沿った働きかけをしなくては教育そのものが成り立たなくなってしまう

-「「参加してもしなくても、何が何でも通常学級」と言われる保護者の方々は、自分がまったく参加できない会議、たとえば外国語のみによって話し合いが進行している会議に、45分間じっと着席して、時に発言を求められて困惑するといった状況をご想像いただきたい。これが一日数時間、毎日続くのである」

-スウェーデンのストックホルムの高校生は17%が中途退学する
--スウェーデンの小学校は一学級22人でしかも複数担任で、校心理士や学校ソーシャルワーカーも配置されている。それでも高校では17%が中退する。

-特別支援教育にいっさい協力しないと決議を出した地域がある
--学校教育の現場にいる教師が、子どもの育ちに対し、成人まで責任を持つことが少ない

-管理職の発達障害児に対する姿勢
--「特に中学校で非行児童の生徒指導に辣腕をふるった実績によって管理職に昇る教師がおり、この教師たちはなぜか体育の教師が多く、アスペルガー症候群やADHDに対しては「わがまま」という把握以外の理解が非常に困難である場合を散見する」

-発達障害の子どもに使う薬
--非常に少量で十分に有効なことが多い
--成人精神科を中心に臨床を行なっているドクターは大量の処方を行う傾向があり副作用によるトラブルを引き起こすこともある
--院外処方のために起こる調剤ミス
---「「こんな少ないはずがないだろう」と薬剤師が気を利かせたつもりで10倍量の処方を行い、子どもが副作用でふらふらになる、という経験を筆者は困ったことに何度かしている。そのために、最近は最初の処方のときに処方箋に赤字で「極少量処方注意」と書き入れるのを常にしている」

関連情報


-発達障害: DevelopmentalDisorder